日本評価研究
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政策工学試論2: 政策プロセス、政策評価、及び予算策定
上野 宏
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2004 年 4 巻 1 号 p. 66-86

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抄録

現在日本では政策・施策評価への関心が高まっている。問題は日本において現在、政策評価・施策評価・業績評価・行政評価・事業評価・事前評価・事後評価などといった各種の評価用語が使用されながら、それら用語の概念定義がその使用者によってそれぞれ異なる事である。更に問題なのは、それら評価概念の相互関係が非常に不明確な状態で使われていることである。これらの問題を解決するために、この論考の第1の目的は、新しい政策評価の枠組み (framework) を提言し、その中で種々の評価概念の位置付けを行うことにある。これは本稿の「政策プロセスII」でなされる。その前に、現在一般に受け入れられている政策プロセスを「政策プロセスI」としてレヴューする。「政策プロセスII」の特徴は、評価と行動決定を分離しそれらを明示的に政策プロセスの中に導入し、更に評価と行動決定との分離を全ての政策段階においてパラレルに導入したことにある。
この論考の第2の目的は、公的予算の編成と決定に係わる。政府の活動は政策によって導かれマネージされている筈であり、現実にそのようになっているかどうかは別として、そうであるべきという事には異論はないはずである。政策は典型的には予算の執行によって実施される。逆にいえば、政策は最も典型的には立法部門 (地方自治体ではなく国レベルの場合は国会) によって決定された予算書によって代表される。この予算の編成と決定方法をなるべく目的合理的にする為に、米国は1993年に政府業績結果法 (Government Performance and Results Act of 1993, 以下GPRAと呼ぶ) を成立させた。其の結果、殆どの連邦政府機関は1999年財政年度分から開始して毎年度の施策業績報告書 (Program Performance Report) の提出を義務付けられている。この報告書は事後的な実績評価報告書である。この論考の第2の目的はGPRAの方法をもう一歩進めて、事後的な実績評価報告書を予算の編成と決定に使うべきであるという主張を支持し、その実現への手段を検討する事である。これは「政策プロセスIII」でなされる。

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