2006 年 6 巻 1 号 p. 3-20
国内外の公共投資について科学的なエビデンス1を明らかにすべきとの社会要請に対し、日本における経験は保健医療分野を除いて皆無と言わざるを得ない2。しかし、イギリス、アメリカにおいては、公共政策判断の場においてもエビデンスに基づく評価が行われ、着実にエビデンスが蓄積されつつある。キャンベル共同計画、アメリカ教育省のWhat Works Clearinghouse、ODA分野の貧困アクションラボの事例などがそれにあたる。このような背景を踏まえ、本稿では、まず先行する「エビデンスに基づく医療」(Evidence-based Medicine: EBM) の系譜とコクラン共同計画について概観する。ついで、社会基盤としての質の高い情報の蓄積の重要性と社会認識の問題を踏まえ、EBMの今後の方向性について考察した。