2006 年 6 巻 1 号 p. 43-54
医療分野のコクラン共同計画、社会政策分野のキャンベル共同計画に大きな影響を受けて、ODA分野でも厳格な実験デザインを適用した一次評価を産出し、将来的にはデータベース化して提供することを目指す「貧困アクションラボ」というプロジェクトが始まっている。その動向を踏まえつつ、実験デザインを巡る諸問題である倫理の問題、費用の問題、バイアスの問題、準実験デザインではなく実験デザインが望ましい理由、そして、今まで実験デザインがODA分野でほとんど使われなかった理由を議論する。さらに、日本の当該セクターの現状と課題を議論し、最後に、ODA分野でも実験デザインによるインパクト評価を行っていくこと、及び同プロジェクトを資金的に支援している世界銀行の最大の出資者である日本が同プロジェクトに注目し、より積極的に関与していくことを提言する。