2006 年 6 巻 1 号 p. 71-83
インドネシアでは、2001年の地方自治法の施行を受け、中央から県・市への予算直接配分や地域参加型の学校運営の導入など、教育分野における地方分権化が進められている。
本稿では、インドネシアの前期中等教育に着目し、地方分権化実施の前後において、教育環境が教育成果に与える有効性がどのように変化したかを、因果モデルを用いて検証した。
主な分析結果として、(1) 学校の予算状況の改善は、教員資質を高めるなど教育環境の向上をもたらし、学力の向上や中退率の減少という教育成果の改善に寄与するが、地方分権化後はこれらの因果関係について影響力と有効性に低下が認められる;(2) 予算規模の大きい学校グループと小さい学校グループを比較すると、地方分権化によるマイナスの影響は予算規模の小さい学校グループにより多く現われていることが明らかになった。
地方分権化が教育現場に与える影響について、更に継続観察するとともに、教職員の質向上や財政的措置により、地方分権化後に拡大が認められる地域や学校間の格差の是正に取り組んでいくことが重要である。