抄録
本研究は、行政、企業、市民という社会的アクターの環境管理能力により表される社会的環境管理能力に関して、アクター間の役割および各アクターの環境管理能力に一定の代替性があるとの仮説に基づき、大気汚染対策に係る社会的環境管理能力の形成プロセス、および各アクターの環境管理能力の形成プロセスに係る因果関係を実証的に明らかにした。具体的には、横浜市、名古屋市、大阪市の1971~2000年における大気汚染対策を事例に、Stepwise Chow Testを用いて社会的環境管理能力の構造変化の時期を示し、アクター間の環境管理能力に一定の代替関係が生じていることを示した。これより、社会的環境管理能力は、能力水準に応じたアクター間の役割の変化・代替を経ながら形成されていくという能力形成プロセスを都市別に示した。そして、アクター間の代替が起こるまでの期間を対象に、行政の環境管理能力の向上が、市民および企業の環境管理能力を向上させるという社会的環境管理能力の形成プロセスに係る因果関係を、構造方程式モデルにより実証した。