2021 年 33 巻 2 号 p. 171-176
本特集は,特定の産業に着目して,人びとが地域の中で家族生活と労働とをどのように形作ってきたのか,その実態とプロセスを明らかにすることを目的としたものである.本稿では理論と方法という視点から本特集を位置づける試論を行う.家族社会学の理論に関しては北米において長く議論の蓄積がある.しかし,そこで一般的に家族研究に援用される社会学理論とは異なる理論的アイデアが今回の特集論文に通底している可能性について議論する.本特集は,いずれの論文も特定の地域を取り上げた研究となっている.方法論的に位置づけるならば事例研究に入ると思われる.本稿の後半では事例研究をめぐる近年の状況について報告する.最後に,本特集が今後の家族社会学に与えるインパクトについてふれる.