2023 年 35 巻 1 号 p. 32-43
本稿の目的は,児童養護施設で生活する子どもたちの家族をめぐる〈語り〉に着目し,子どもたちがどのように家庭経験を意味づけ,家族の再構築を実践しているのかを明らかにしていくことである.まず,彼女たちは,「非標準的な」家庭生活から施設入所となったことを解釈する.そして,彼女たちは家庭と離れ,施設生活を始めるなかで,家族との再構築において,家族の状況が優先されやすいという構造的な制限を経験する.こうした経験は,ジレンマを生じさせることがあることも示された.しかし,制限がありながらも,彼女たちは,家族との関係調整を実践していく.さらに,彼女たちは家庭復帰を希望していることから,彼女たちの〈語り〉は,「標準的な」家族の〈語り〉へと一元化していくことが示された.以上から,家族再統合において子どもの視点からの支援の必要性について,示唆を提示した.