1999 年 11 巻 11 号 p. 71-82
本研究の目的は、夫の家事遂行および情緒的サポートが妻の夫婦関係満足感にどのような影響を与えるのか、またその影響の仕方は他の要因によって異なるのかを検討することである。従来、従属変数として扱われてきた家事分担を独立変数として設定し、妻の夫婦関係満足感への影響をみること、またこれまであまり扱われてこなかった夫の情緒的サポートを取り上げていることが本研究の特色である。データは、NFR予備調査「家族と夫婦関係に関する調査」を用いた。分析対象は、夫と同居する有配偶女性122人である。分析の結果、夫の家事遂行より情緒的サポートの方が、妻の夫婦関係満足感と関連すること、またその関連は伝統的な性別役割意識をもつ妻において強いことが発見された。この結果は、職業などによる評価を得ることが難しい専業主婦にとって、自ら行う家族役割に対する夫からの評価やねぎらいがとりわけ重要になってくるという観点から解釈された。