1999 年 11 巻 11 号 p. 83-94
本稿の目的は、大都市インナーエリアに居住する高齢者の世代間関係を記述し、それを選択-制約モデルによって説明することにある。選択-制約モデルによれば、世代間関係は、個人が一定の機会/制約条件の下で選択的に構築するネットワークと仮説化される。われわれは、名古屋市のインナーエリアに居住する高齢者の調査データを分析して、高齢者と子どもとの関係を検討した。住宅資源の豊かな回答者は、既婚子との同居率が高く、別居子との接触も頻繁であった。一方、住宅資源の乏しい者は、子どもから孤立しがちであった。また、家業を営んでいた者と70歳以上の者は、既婚子との同居率が高い傾向がみられた。これらの知見は、選択-制約モデルによって整合的に説明された。結論として、選択-制約モデルは、高齢者の世代間関係の多様性を説明するのに一定の有効性を持っていることがわかった。