1999 年 11 巻 11 号 p. 95-107
社会学の理論をより普遍的なものへと構築していく過程で、国際間、年代間、階級/階層間、ジェンダー間などの異文化間での比較実証調査が行なわれている。異文化比較調査は研究結果の信頼性や妥当性を高める為に重要な役割を果たす。本稿では、文化の違いが言語解釈の異同に影響するという異文化視点の導入が、社会化価値を形成する過程の機構を考察する時の理論と方法の発展にいかに役立つかを問題提起したい。予備調査からデータ解析作業に至るまでの研究の諸段階において、研究者自身と調査対象者両者の多様な言語解釈に異文化視点を導入して潜在価値概念の因子分析と概念軸の意味内容の理解に役立てた。1997年夏に埼玉県川越市で6年生全員から無作為に抽出した保護者を対象に社会化価値調査を行なった。この調査での質問文作成作業と結果を通して、文化の理解に基づいたより適切な言語解釈に助けを借りながら、現代日本の社会化価値の概念軸について考察する。