2007 年 19 巻 1 号 p. 30-41
本稿の目的は, 家族社会学の形成過程を探るという問題関心の下, 戸田貞三の初期著作において, 家族が, どのように問題にすべきものとして構成されているのかを検討することである。彼の初期著作において看過できないのは, 明らかな社会改良への志向である。制度や集団, その成員, あるいは生活形式などの一般的なタームも, その志向をめぐって組織化されており, それによって社会的な弊害が析出される。そこで重要になるのは人々が正確な事実を知り, それに基づいて行為することであり, そのための契機として家族は位置づけられている。統計法はそうした人々が基づくべき事実を知らしめるための方法であり, それによって, 彼の論理において重要な位置を占めている家族についての事実も知らされるのである。