1994 年 35 巻 1 号 論文ID: jjom.H05-3
ホンシメジ,シャカシメジを合成液体培地で培養し,栄養生長にともなう菌糸体中の低分子炭水化物,高分子炭水化物および有機酸の経時的変動を追跡した.両菌種の栄養菌糸体より,トレハロース,グルコース,フルクトース,マンニトール,アラビトールおよびグリセロールが検出され,主成分はトレハロースであった.グリコーゲンとトレハロースは菌糸体の生長にともない急増したが,最大生長後は急減し,貯蔵炭水化物であることが推察された.細胞壁多糖である熱ギ酸可溶多糖,アルカリ可溶・酸可溶多糖,熱アルカリ可溶多糖,アルカリ可溶・酸不溶多糖およびキチンは,菌糸体の自己消化中もほとんど含量変動はみられなかった.両菌種より11種類の有機酸が検出された.各有機酸類は菌糸体の生長にともない増加し,最大生長後は減少したが,シャカシメジの乳酸は最大生長後も増加し,本菌は乳酸分解能の低い菌種であることが推察された.