1994 年 35 巻 2 号 論文ID: jjom.H05-79
シイタケNo.68菌株の培養に伴う菌糸体中のグルタミン酸脱水素酵素(GDH)活性を調べた結果,子実体形成効果を持つバニリンおよびグルクロン酸を一方または共に添加した培地において,培養初期の5-10日目と子実体形成時(40-50日目)に大きなピークがみられた.また,幼子実体においても高い活性がみられた.培養初期のピーク時である7日目にDiethyldithiocarbamate(DETC)を添加するとGDH活性は抑えられ,子実体形成もほぼ阻害されたが,21日目添加では阻害はみられなかった.ペプトン・グルコース(PG)培地に培養10日および15日目にバニリン・グルクロン酸(VGlcU)を添加した場合,PG培地区に比較して8日後のGDH活性は4倍に,菌糸体乾燥重量は2倍となり,7日および11日遅れて子実体を形成した.10日目にDETCを同時添加した場合および20日目以降にVGlcUを添加した場合には,GDH活性の増加,乾燥菌糸体重量の著しい増加および子実体形成はほとんどみられなかった.グルタミン酸培地にフェルラ酸を添加すると,Glu非利用性菌株においても菌糸体が僅かに生育し,GDH活性の増加がみられた.以上のことから,1)フェノール化合物はGDH活性を上昇させる効果がある.2)培養初期のGDH活性のピークは子実体形成を誘導する条件を整えることに関与している可能性がある.3)子実体形成に関与する酵素系の誘導生成は,培養15日目までに,両者を一方または共に吸収してから20日間程度の間に行われる可能性があるなどが明らかになった.