日本菌学会会報
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総説
ラン科植物の菌根共生系解明に関する研究
谷亀 高広
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2011 年 52 巻 1 号 論文ID: jjom.H22-02

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抄録

腐生菌と菌根共生する菌従属栄養性ラン科植物であるタシロランについて, 分離菌株を用いた共生培養に成功した. また,培養に供試した菌株について子実体形成に成功し,その形態的特性から本菌をイヌセンボンタケと同定した.菌従属栄養性ラン科植物として知られるヒメノヤガラについては, 菌根菌が Ceratobasidiaceae に属し,樹木に対して外生菌根形成能力をもつことを明らかにした. 分布域が限られているラン科植物であるコオロギランの菌根菌は複数箇所の自生地で採集したにも関わらず,塩基配列の相同性が互いに極めて高かった. この高い菌根菌への特異性がコオロギランの分布を極限する要因になっていると考えられた. 一方,広域分布種として知られるトラキチランは,アセタケ属菌の多くの種と菌根共生することが明らかとなった.この菌根菌の中には広域分布種も存在し,このような菌根共生系がトラキチランの広範分布と対応していると考えられた.

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© 2011 日本菌学会
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