2011 年 52 巻 2 号 論文ID: jjom.H22-10
本稿では,菌類の職場のひとつ,リグノセルロース系バイオマスからのバイオエタノール生産技術開発について,専門でない研究者にとってやや取り付き難いと思われる点を,平易に解説することに焦点を当てた.その取り付き難さは,ターゲットとなる基質が,元々植物という生き物で,固体で,結晶性で,化学的・構造的にヘテロな物質だということに,糖化前処理の種類やバイオマス種の変動因子が掛け合わさることによる.菌類のバイオマス分解のための複雑な酵素系の理解は進み,それを最大限に引き上げる努力も続けられている.一方で,菌類のバイオマス糖化のポテンシャルや多様性は私たちの理解を大きく超えたものであり,角度を変えて読み解く努力を続ければ,糖化技術はさらに向上し,バイオエタノール生産は私たちの生活を支えるひとつの重要なエネルギー源として定着すると思われた.さらに,真菌類から有用な酵素系をみつける実際についても考察した.