日本菌学会会報
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総説
C 5・C 6 糖発酵担子菌によるバイオマスからの直接的エタノール生産
岡本 賢治
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2012 年 53 巻 2 号 論文ID: jjom.H23-07

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抄録

 本稿では,身近に生息する担子菌において,効率的なキシロース発酵能のみならず,C 5 ならびにC 6 糖の発酵が可能なこと,バイオマス原料に対して酵素生産⇒糖化⇒発酵が単一のプロセスで達成できることなど,新たに見いだした興味深い能力を紹介した.これらC 5・C 6 糖発酵担子菌は,遺伝子組換え菌と比べて遜色ない機能を有し,特にリグノセルロースや食品廃棄物など未利用バイオマスからの直接的エタノール生産能力は極めて優位である.今回,一連の研究を通して,担子菌が潜在能力の豊富な微生物であることに改めて気づかされた.森林の中で生き残っていくため,自然界のさまざまな環境や状況に適応できるフレキシブルな機能を備えているのかもしれない.今後,当該発酵担子菌のさらなる能力を発掘し,持続的循環型社会の実現に貢献する,自然のポテンシャルを活かした環境調和型のバイオマスリファイナリーへと展開していきたい.

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