2024 年 65 巻 2 号 p. 39-45
Aspergillus subgenus Nidulantesのテレオモルフ(旧Emericella属)は,主に土壌から分離され,マイコトキシンの一種であるステリグマトシスチンを多くの種が産生する.また,いくつかの種はアフラトキシンを産生し,ヒトや動物の真菌症原因菌として報告されている.これまで分子系統と子嚢胞子の形態との相関は検討されていなかった.β-tubulin遺伝子の分子系統解析により,子嚢胞子の形態に基づく複数のグループが異なるクラスターを形成し,分子系統と形態の相関が確認された.しかし,β-tubulin遺伝子では一部の種の識別が難しいことが明らかとなった.一方,calmodulin遺伝子を用いた解析では,これらの種も独立したクラスターを形成するため,subgenus Nidulantesのテレオモルフを同定する際にはcalmodulin遺伝子がより適していると示唆された.