2025 年 66 巻 1 号 p. 15-24
本稿は,2023年度日本菌学会奨励賞受賞講演の内容を再構築して作成した.本研究では,植物病原菌類の最も重要な表現形質と言える病原性に着目し,接種試験の結果に基づく宿主範囲が植物病原性Alternaria属菌の種の類別に有効であることを示した.収集された85菌株は,新種3種を含む26種に類別され,接種試験によって宿主範囲を検討した種については,植物の品種や種,属,連,亜科などのランクでそれぞれ独自の宿主選択性を分化させていることが明らかとなった.上記の結果から病原性という指標が近縁種との類別に有用な形質であることが示され,形態的特徴,分子系統解析,および病原性に基づく統合的な種概念は,本属菌の種の境界をより鮮明にすると考えられた.