日本菌学会会報
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論文
カプロン酸エチルを高生産する清酒酵母の育種と清酒醸造特性
田﨑 裕二 大関 日菜子児玉 夏樹飯野 杏木村 直生阪野 和勇猪股 拓未星野 奈月伊部 智也神林 遥菜田口 優希長井 隆
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2025 年 66 巻 2 号 p. 47-58

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抄録

果実様の香りが際立つ清酒を造るため,吟醸香成分を高生産する清酒酵母を育種した.清酒酵母K701のEMS変異株からCer耐性株を分離し,それらの麹汁培養物の官能評価で,果実様の香りが高い35株を選んだ.清酒小仕込試験での35株の醸造特性と香気生成能より,有望な2株(K701N7,K701N30)を選んだ.実地醸造試験において,2株とも発酵に少し遅れはみられたが,十分なアルコールが生成された.K701N7とK701N30の製成酒は,カプロン酸エチルを主体とした華やかな香りを含み,濃醇で個性的であった.特に,K701N30の製成酒には,極めて高いカプロン酸エチル(29.6 mg/L)が含まれていた.また,K701N7の製成酒は酸味にも特徴があった.以上より,K701N7とK701N30の清酒酵母としての実用性が確認できた.11のカプロン酸エチル高生産株には,その高生産の要因と知られるFAS2-1250S変異がヘテロ型(8株)またはホモ型(3株)で存在した.K701N30株にはホモ型FAS2-1250S-1304T変異が存在したが,FAS2-1304T変異はカプロン酸エチル高生産には作用していなかった.11株のFAS2に他の変異はなかったため,本研究での育種法では,カプロン酸エチルを高生産するFAS2-1250S変異株が優先的に選択されることが明らかにされた.ここで得られた成果は,吟醸香高生産酵母株を育種し,実用化する上で有益と考える.

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