2001 年 31 巻 2-3 号 p. 12-21
「生きる力」の育成を前面に今回改訂された学習指導要領では, 子どもたちが自ら学び自ら考える力の育成が強調され, 子どもたちの個性重視の方針が改めて指摘された。しかし, いかにすればこうした教育が実現するのか, 今後解決されなければならない問題は山積している。本研究では, この現代が抱える難問に示唆を得る一方法として, アメリカ合衆国のパーキンス盲学校幼稚部が創設期において実施した音楽教育の内容とその意義について具体的に検討を行った。本研究の結果, 明らかになった点は以下の通りである。1) パーキンス盲学校幼稚部の音楽教育においては, 技能や知識の習得を重視し, 器楽や音楽理論の指導を充実させたが, これらの指導はいずれも選抜された児童のみを対象とするものであった。2) 歌唱指導は全員に実施され, 音楽に対する愛好心の育成や, 心身の調和的発達が目指された。3) 音楽教育は, 子どもたちの音楽知識や技能の獲得だけでなく, 自主的な学習意欲, 協調性, 表現力, 友達同士の仲間意識の形成などの成果をもたらした。