音楽教育学
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研究論文
The Contemporary Music Projectの収束期における活動の特質
長谷川 諒
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2013 年 43 巻 1 号 p. 13-24

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抄録

 本研究は, 1960年以降の米国音楽科教育改革に重要な影響力をもったThe Contemporary Music Projectの諸活動の中でも, 1969年以降の収束期の活動に着目し, その活動の実際を明らかにするものである。収束期の活動は, ①演奏家や作曲家といった音楽の専門家をコミュニティーに配置する「Professionals in Residence」, ②Comprehensive Musicianshipの指導方法を音楽教育者に開発させる「Comprehensive Musicianshipの指導」, そして, ③Comprehensive Musicianshipに関する著書の出版やセミナー, ワークショップの開催といった「補完的な活動」, の3種目で構成される。③はComprehensive Musicianshipに関する著書出版等の雑多な活動であり, それまでの活動の成果を披歴するものであるが, 各音楽家にかなりの裁量権を与えた①や, 「指導法の開発」という目的を超えた活動を許容した②は, 収束期におけるThe Contemporary Music Projectの活動をさらに多様化させるものであった。特に②において, それまでになかった多文化教育的視点が盛り込まれた点, そして, 多文化理解という目的を掲げながらも指導の具体としては音楽構造の理解が強調されていた点は特筆すべきである。収束期の活動は, それまでの成果を流布する側面と, 各活動主体に判断を委ねつつ発展的な展開を許容する側面をともに併せ持っていたと言える。

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© 2013 日本音楽教育学会
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