森田療法は,不安・心気・強迫に悩む人に広く適応できる精神療法である.「べき」思考の持ち主は,コントロールできない対象(感情,症状,人間関係,仕事)をコントロールしようとして対象にとらわれ(悪循環),生の欲求が生活に発揮されない.そこで,①対象のコントロールをあきらめ,事実を受け入れること(体験処方)と,②生活で実施可能な行動を促すこと(行動処方)を同時に行い,症状を持ちこたえながら,生活での体験をふくらませていく.すると,本来の欲求が自覚され,「べき」思考が背景に退き,仕事の進め方や人間関係が円滑になる.産業精神保健における森田療法の実践ポイントとして,(1)症状を生活の中でつかむ,(2)そのまま感じる,(3)「できないこと」と「できること」を分ける,(4)作業の進め方,(5)休養をとる,(6)働き方を見直す,を示した.また,森田療法を学ぶ方法について述べた.産業精神保健への森田療法の活用が期待される.