2024 年 32 巻 2 号 p. 203-209
ブリーフインターベンションやハームリダクション,リスクコミュニケーションのコンセプトを踏まえ,動機づけ面接,ナッジなどのアイデアを活用した,産業保健職が行う減酒指導を紹介した.来談者は自分の行動を変えることに対し両価的であることを前提に,まず良好な相談関係を構築し,訴えを丁寧に聞き取り,課題を明確にし,共有する.1日2合を超える飲酒で健康障害やさまざまな問題の発生率が高くなることを伝えた上で,実現可能な減酒目標の設定を来談者との対話を通して行い,実行に移し,フォローしていく.その具体的なやり取りを逐語的に提示し,ポイントとなる発言に適宜コメントを付けながら解説を行った.一方,対応困難例には人事労務と連携・役割分担しながら問題を直面化し,治療につなげていくことの重要性も示した.減酒に成功すると生活の質が向上し人生が変わる可能性がある.産業保健の醍醐味と言えるだろう.