産業精神保健
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特集 パワーハラスメント防止と産業精神保健
パワーハラスメント行為者の心理と背景
小林 由佳
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2024 年 32 巻 3 号 p. 282-286

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抄録

事業所におけるハラスメント事案では,容認されない行為を明確にして,処分によって行為者の反省を促すことになる.しかし,行為者の思考や行動様式が是正されないままでは同様の行為が繰り返されることがある.そのため,処分など「罰」を中心とした対処だけではなく,行為者の心理や環境的背景を紐解き,行為者の行動変容を促すことが重要である.本稿では,行為者の心理的側面を理解するための概念として,価値観,役割期待,反応的/能動的攻撃行動について解説し,認知行動モデルを用いてその行動様式を考察した.加害行為自体は否定されるべきであるが,周囲の者が行為者にレッテルを貼って否定したり排除したりすることのないよう適切な環境調整を行うことが必要である.産業保健職などの支援者には,ハラスメント行為の背景を理解し,行動の改善を信じる姿勢が求められる.

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© 2024 一般社団法人 日本産業精神保健学会
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