産業精神保健
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総説
大地震により被災した一般労働者のメンタルヘルスに関する研究動向~スコーピングレビュー~
安部 仁美 錦戸 典子
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2025 年 33 巻 3 号 p. 201-210

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抄録

目的:本研究は,大地震により被災した一般労働者のメンタルヘルスへの影響を検証した研究を系統的にマッピングし,研究上の課題を特定することを目的とした.

方法:PubMed,医中誌にて,大地震,労働者に関するキーワードを用い,かつ,原著論文で,1969年以降の文献を検索し,スコーピングレビューを行った.文献から抽出したデータは,著者名/年/国,論文タイトル,研究目的,研究方法,研究対象者,研究デザイン,地震名,被災した労働者のメンタルヘルスへの影響とした.

結果:採用された論文は6編であった.大地震により被災した一般労働者のメンタルヘルスへの影響として,不眠,抑うつ,イライラなどが報告された.PTSD症状の有無と家屋被害状況との関連や,精神的健康度と相談相手の存在との関連などの知見は得られた.一方,労働時間,職場環境や職場の支援状況等を含む就労環境に関する質問項目を用いた研究が見られず,今後職場でどのような対策が必要なのかの検討に活かせる研究報告がほとんどないことがわかった.就労環境を含めたデータ収集と関連分析や縦断研究の推進が期待される.

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© 2025 一般社団法人 日本産業精神保健学会
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