日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
医療連携と漢方治療にて管理を行った片頭痛に起因する神経血管性歯痛の1例
岡安 一郎達 聖月鮎瀬 卓郎和気 裕之
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2018 年 11 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

症例の概要:患者は50代女性(主婦).X年11月,左側のこめかみと左上臼歯部の痛みを自覚し,近医歯科を受診した.「非定型歯痛」との診断で治療を受けるも症状変わらず,翌12月,「長崎大学病院オーラルペイン・リエゾン外来」紹介受診となった.口腔顔面領域の診察と検査結果から,器質的異常所見は認められなかったが,国際頭痛分類第3版beta版に準じ,「前兆のない片頭痛」とそれに起因する「神経血管性歯痛」が疑われた.また,「緊張型頭痛」,「パニック障害」の既往もあり,当院・総合診療科(内科)ならびに精神神経科と連携した.結果,「緊張型頭痛」に加え,「前兆のない片頭痛」,「不安障害」と診断された.治療は医療連携の下,病態説明と生活指導,心身医学療法,漢方治療にて,歯痛と頭頸部痛,めまいやふらつきなどの随伴症状が軽減し,良好な疼痛管理が維持できるようになった.
考察:本症例は,MW分類(心身医学・精神医学的な対応を要する患者の分類)Type C(身体疾患・精神疾患併存ケース)に該当する.このようなケースにおいては,医科身体科ならびに精神科との医療連携が必要不可欠となる.本症例のように,痛み以外の種々の症状が伴うケースに対しては,漢方治療が有効となり得る.
結論:口腔顎顔面領域の症状を主訴とする患者は歯科外来を受診するが,医科の身体疾患・精神疾患も考慮して,総合的な判断の基で対応することが必要となる.

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© 2018 日本口腔顔面痛学会
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