抄録
顎顔面口腔領域への侵害刺激は三叉神経節ニューロンで受容され,三叉神経脊髄路核尾側亜核に伝達される.その侵害情報は上行し,視床を経て大脳皮質体性感覚野や大脳辺縁系に伝達され,はじめて「痛み」として認知される.この末梢から中枢神経系に至る疼痛伝達経路のどこかに可塑的変化が起こることにより,顎顔面口腔領域の異常疼痛が発生すると考えられている.近年の研究から,神経細胞だけでなくグリア細胞や免疫細胞といった多くの細胞の可塑的変化が,異常疼痛発症の原因となる末梢性感作,中枢性感作および脱抑制を引き起こしていることがわかってきた.
本稿では,基本的な疼痛伝達機構を解説するとともに,顎顔面口腔領域に発症する異常疼痛発症メカニズムについて最新の知見も交えて概説する.