日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
咬筋の筋痛にエコーガイド下筋膜リリース注射が有効であった症例
左合 徹平河端 和音椎葉 俊司
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2018 年 11 巻 1 号 p. 49-53

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抄録
症例の概要:患者は38 歳の男性である.下顎右側臼歯部の疼痛と開口時痛を主訴に近隣歯科医院を受診した.同院で口腔内診査やパノラマX 線撮影,歯周組織検査などを行ったが,異常所見は認められず,当院口腔外科を紹介受診した.口腔外科の診察で下顎骨や顎関節形態に異常は認められなかったが,右側下顎角部の咬筋の圧迫により下顎右側第一大臼歯に関連痛を認めたため,右側咬筋の筋膜性疼痛の疑いで当科紹介となった.当科初診時の診察で右側の咬筋に著明な圧痛点と右側下顎臼歯部に関連痛を認めたが,明らかな筋肉の索状硬結は触知できなかった.超音波診断装置で右側咬筋の圧痛点を観察すると筋膜の癒着である白色に描出される所見が見られた.エコーガイド下で癒着部位に1%メピバカインを注入し,癒着が解除されたことを確認した.施行後に右側咬筋の筋・筋膜性疼痛の関連痛と思われる右側下顎臼歯部の疼痛と開口時痛は軽快し,開口量も増大した.
考察:本症例は明らかな筋肉の索状硬結を触知できないものの関連痛と局所の筋痛を認めた筋膜性疼痛であった.エコーガイド下で筋膜の癒着を解除することで症状の改善が見られた.
結論:明らかな索状硬結を触知できない筋膜性疼痛においてエコーガイド下筋膜リリース注射は有効な治療法の一つであることが示唆された.
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© 2018 日本口腔顔面痛学会
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