日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
漢方療法が奏効した口腔乾燥症および心因性舌痛症の併存した1例
千堂 良造山口 孝二郎山下 薫遠矢 明菜山形 和彰真鍋 庸三杉村 光隆
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2018 年 11 巻 1 号 p. 43-47

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抄録

症例の概要:31歳女性.主訴:口腔乾燥および舌痛の精査加療.現病歴:智歯抜歯4 本施行,2か月後より舌痛を自覚するようになる.3か月後口腔乾燥感を認め,五苓散の投与を受けるも口腔乾燥感および舌痛は改善せず,漢方センターを受診した.
臨床検査成績:Visual Analogue Scale(VAS)43.抗SS-A抗体陰性,抗SS-B抗体陰性,サクソンテスト1.2g/2分,CMI領域Ⅱ易怒性,SDS47,STAI状態不安48(Ⅳ),特性不安47(Ⅳ).
全身的現症:頭痛,四肢の冷え,全身倦怠感,強い生理痛を認める.
臨床診断:口腔乾燥症および心因性舌痛症.
処置並びに経過:サクソンテストは1.2g/2分で口腔乾燥に起因する舌痛も考えられたため,補中益気湯5 g/日+当帰芍薬散5g/日を投与開始した.35 日後サクソンテストは1.9g/2分に改善した.しかし舌痛VAS43で神経症傾向もあるため加味逍遙散5g/日に変更し,56日後舌痛VAS0 となり治療終了した.
考察:本症例は気虚(基礎代謝低下),陰虚(体液損耗),瘀血(末梢循環不全),気鬱(不安神経症状)が混在していた.そのため漢方で気・血を補い,水のコントロールを行った後,不安神経症状に対応するという2 段階の治療で症状が改善したものと思われた.
結論:口腔乾燥症と舌痛症が併存した場合は治療方針の決定に難渋する事があるが,心理テストの利用,漢方を投与することで治療効果が上がる症例も存在すると考えられる.

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© 2018 日本口腔顔面痛学会
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