日本口腔顔面痛学会雑誌
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総説
片頭痛の薬物治療
柴田 護
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2021 年 13 巻 1 号 p. 21-27

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抄録

片頭痛は中等度〜重度の拍動性頭痛を主徴として,悪心,嘔吐,光過敏/音過敏を随伴する.未治療の場合は4〜72時間持続するため,患者に対する障害度は高い.さらに,若年者に好発するため,社会全体に与える経済的損失は非常に大きい.片頭痛の病態生理には不明な点が多いが,根本的な原因は神経機能異常にあると考えられる.予兆は視床下部の異常によって引き起こされ,前兆は大脳皮質での皮質拡延性抑制/脱分極が関与すると考えられている.しかし,頭痛発生時には三叉神経系の異常活性化が存在し,カルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP)が末梢性感作誘導に中心的な役割を果たしている.片頭痛急性期治療薬の主役は5-HT1B/1D/1F作動薬であるトリプタンである.その作用機序はCGRP放出抑制と考えられている.片頭痛予防薬としては,カルシウム拮抗薬,抗てんかん薬,三環系抗うつ薬が用いられているが,これらの薬剤は神経の異常興奮性を是正する作用がある.しかし,現在の片頭痛治療にはunmet medical needsが存在する.CGRPに対する分子標的治療が最近になって導入された.CGRP関連モノクローナル抗体と低分子CGRP受容体拮抗薬からなるが,特に前者は優れた片頭痛予防効果を発揮する.現在,片頭痛薬物治療は新しい時代に入りつつあると言ってよい.

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