抄録
症例の概要:患者は31歳女性.2か月前より左側下唇とオトガイ部の灼熱痛と痺れを自覚し,耳鼻咽喉科,脳血管内科および口腔外科を受診したが原疾患の特定はされず,症状の改善を認めないため,当科を紹介受診した.初診時,左側三叉神経第3枝領域に疼痛と著明な知覚低下を認めたため,メコバラミン,ATP腸溶錠,ミロガバリンの内服および星状神経節ブロック治療を開始した.治療開始1か月後,症状は改善傾向にあったが,治療開始4か月後に疼痛と知覚低下が増悪し,知覚低下の両側三叉神経全枝への波及を認めた.また,患者から手指のこわばりや寒冷環境下における手指蒼白などRaynaud現象と思われる訴えがあったため,膠原病リウマチ科へ紹介したところ,混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)と診断され,治療が開始された.現在はRaynaud現象や関節痛および三叉神経領域の疼痛は症状改善を認めているが,知覚低下は残存している.
考察:MCTDの症状に三叉神経障害や三叉神経痛が存在するが,Raynaud現象など頻発症状に先行し,初期症状として単独で出現した症例は少ないため,原疾患の診断に苦慮した.MCTDには致死的な随伴症状も含まれるため,早期の診断および専門科での加療が重要である.
結論:三叉神経領域の疼痛および知覚低下に対し,鑑別診断としてMCTDを考慮することが必要である.