抄録
症例の概要:症例1;20代女性.症例2;50代女性.いずれも顎の痛みを主訴とし,近医歯科からの紹介で「長崎大学病院オーラルペイン・リエゾン外来」を受診した.患者は,Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders (DC/TMD)に準じて評価を行い,症例1は顎関節症(顎関節痛障害),症例2は顎関節症(咀嚼筋痛障害)と診断した.医療面接から,2症例とも,学校や家庭生活におけるストレスが契機となって発症したと考えられたため,MW分類(心身医学・精神医学的な対応を要する患者の分類)Type D(狭義の歯科心身症に該当するケース)の顎関節症中核群に該当すると判定し,心身医学的対応を中心とした管理を行った.
考察:心理社会的ストレスとともに,歯ぎしり,くいしばりといったパラファンクションがみられることも2症例の共通点であり,症例1は顎関節が,症例2は咀嚼筋がTarget organとなり,顎関節症が発症したと考えられる.症例2は,痛みだけでなく,肩凝り,動悸,目眩等,痛み以外の種々の症状がみられる点で症例1とは異なり,より難症例の顎関節症中核群であるといえる.
結論:顎関節症の病態は生物心理社会的モデルに該当し,2軸で診断を行うことが推奨される.狭義の歯科心身症に該当する顎関節症中核群に対し,心身医学的治療を基本とし,個々の症状に合わせて対応を行った2症例を報告した.