日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
重粒子線治療の晩期有害事象として神経障害性疼痛を生じた鼻副鼻腔悪性黒色腫の1例
佐藤 仁村岡 渡中山 詩織莇生田 整治嶋根 俊和中川 種昭
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2021 年 13 巻 1 号 p. 97-103

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抄録

症例の概要:患者は60代の女性で,右側上顎歯肉の疼痛を主訴として来院した.右側上顎歯肉や口蓋粘膜に発赤や腫脹はなく,アロディニアが認められた.CTでは右側上顎骨が粗造となっているものの,骨吸収像や腐骨形成は認められなかった.患者は10年前に右側鼻副鼻腔悪性黒色腫(T3N0M0)に対して重粒子線治療を施行していた.腫瘍の局所再発や遠隔転移,放射線性骨髄炎を示す所見はなく,重粒子線治療の晩期有害事象として生じた神経障害性疼痛と診断した.プレガバリンの投与により右側上顎歯肉や口蓋粘膜の疼痛は軽減した.
考察:頭頸部悪性腫瘍に対する重粒子線治療の晩期有害事象に関する詳細な検討はほとんどない.重粒子線治療による頭頸部がんサバイバーでは晩期有害事象として神経障害性疼痛が生じる可能性があり,適切な診断や治療,ケアが重要である.
結論:頭頸部悪性腫瘍に対する重粒子線治療では晩期有害事象として末梢神経障害が生じることがあり,本症例では遷延化した神経障害性疼痛に対して,プレガバリンの服用が有効であった.

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