日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
難治性の口腔粘膜の痛みに立効散が奏効した一症例
安藤 祐子山崎 陽子新 美知子冨澤 大佑井村 紘子細田 明利川島 正人嶋田 昌彦
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2011 年 4 巻 1 号 p. 1_57-61

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抄録
症例の概要:患者は67歳の女性で,当科初診時には,左側頬粘膜と舌尖部の自発性灼熱痛を訴えていた.さらに,痛みは刺激物で増強した.13年前,口腔内の荒れ感を自覚するようになり,上顎義歯装着後,症状は痛みに変った.5年前の本院口腔外科初診時に,口腔扁平苔癬が疑われ経過観察となった.その後,カンジダが検出されため抗真菌薬をしばらく処方されていた.当科初診時には,舌乳頭の萎縮が認められ,ガムテストでは6.8ml/10分間で,細菌検査ではカンジダが検出された.血液検査では軽度の鉄欠乏性貧血が考えられた.以上から,口腔カンジダ症,口腔乾燥症および鉄欠乏性貧血と診断した.抗真菌薬の処方によりカンジダは消失したが,頬粘膜と舌の痛みは消失しなかった.そこで,立効散の鎮痛作用を期待して処方したところ,舌尖部を除き頬粘膜の症状は軽減し,痛みの範囲は縮小した.立効散開始2ヶ月後,刺激物摂取時以外に自発痛は消失し,また,痛みの頻度が減少した.その後,鉄欠乏性貧血は改善されなかったが,口腔内の症状は初診時に比べ軽減した.
考察:本症例では鉄欠乏性貧血は改善されなかったが,立効散を用いた治療により,口腔内の症状は軽減した.
結論:立効散は器質的病変に由来する口腔粘膜痛の対症療法として有用であると考えられた.
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© 2011 日本口腔顔面痛学会
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