抄録
目的:目的:心理社会的要因と習癖行動要因が顎関節症の機能時痛にどのような影響を与えているのかを,構造方程式モデリングを用いて検証すること.
方法:企業就労者を対象に行った質問票による調査によって得られた2203名のデータを解析対象とした.質問票は顎関節症関連症状に対する4質問と心理社会的要因(ストレス感,不安感,抑うつ感,慢性的な全身疲労感),上下歯列接触癖,睡眠時ブラキシズムに起因する起床時症状に関する6質問の合計10質問(5段階評価)から構成されている.得られたデータは無作為に2群に分け,それぞれ探索的因子分析と構造方程式モデリングを用いた検証的因子分析を行った.
結果:2203名のうち362名(16.4%)が顎関節症と判定された.構造方程式モデリングの結果から,習癖行動要因は顎関節症関連疼痛に対して影響を及ぼし,心理社会的要因は顎関節症関連疼痛への直接的影響は少なく,習癖行動要因に対する影響が大きかった.
結論:ストレス,不安感,抑うつ感や慢性的な全身疲労感などの心理社会的要因は上下歯列接触癖や睡眠時ブラキシズムなどの習癖行動の増加を引き起こし,それにより顎関節症の機能時痛の増加を引き起こす可能性が示された.