日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
痛みセンターと歯科医院の同時介入により改善した特発性歯痛症例
牧野 泉西原 真理牛田 享宏
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2015 年 8 巻 1 号 p. 33-38

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抄録
症例の概要:症例は48歳の女性.主訴は上下顎左側臼歯部の痛みと左側上肢の感覚低下であった.約5年前より上下顎左側臼歯部に激痛が出現し,多くの医療機関で歯内療法や薬物治療を受けたが改善なく,当痛みセンターを受診した.痛みは自発痛であり,日内変動があった.今までの経過より,特発性歯痛と診断した.全顎的に口腔衛生状態は悪く,歯科治療途中の歯が多数存在し,抜歯部分も補綴されていなかった.当科では,麻酔科医,歯科医及び理学療法士による集学的治療を行った.疼痛行動と考えられる口腔パラファンクションの是正指導,下顎運動療法を毎診察時に行ったところ,疼痛強度の変化が起き,歯科治療を受けることを決心できた.歯科医院では,歯科治療に対する不安を取り除くために,歯周病の初期治療から開始した.当科介入約12か月後,疼痛部位に補綴物を装着したが,痛みは出現しなかった.
考察:原則的に特発性歯痛に対して侵襲性の高い歯科処置は避けるべきである.しかし,歯内療法中や抜歯した状態で痛みが改善するまで待つことは,口腔環境の悪化だけでなく患者の不安を大きくしかねない.本症例は,心理教育を含めた運動療法と同時に歯科治療を実際に受けることにより,経験と学習を繰り返したことで,痛みの認知が変更し,痛みの軽減が促されたと考えられる.
結論:痛みに対する心理教育を含んだ運動療法と歯科医院と連携した治療を行う事は,特発性歯痛改善に有効である.
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© 2015 日本口腔顔面痛学会
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