日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
咀嚼筋の筋筋膜性疼痛により開口制限を呈し,それらの症状に対しPIRが有効であった2症例
木村 陽志竹岡 義博神野 洋輔
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2015 年 8 巻 1 号 p. 39-42

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抄録
症例の概要:症例1・2ともに評価は我々が作成した評価シートを用いた.疼痛の指標としてはNumerical rating scale(以下,NRS)を用いた.症例1:20代,男性.右側の上下智歯を局所麻酔下にて抜歯.約3週間後にも,右側の側頭筋,内側翼突筋および頬筋の伸張痛,圧痛と開口制限は残存していた.4回の治療(Post Isometric Relaxation以下PIR)で最終評価時(抜歯後7週目)には疼痛は消失(NRS:0)した.開口量(上下顎中切歯間距離)は治療前36mm,治療後には50mmまで改善した.症例2:30代,男性.突如右顎関節周囲に疼痛が出現.主に咬筋,内側翼突筋に伸張痛,圧痛があり,開口制限と咬合時痛を生じていた.2回の治療で最終評価時(発症後5週目)には疼痛は軽減(NRS:0から1)した.また開口量は治療前24mm,治療後には50mmまで改善した.
考察:症例1・2はSimmonsらの診断方法より咀嚼筋および頬筋にTaut band,Trigger point,Referred painを認めていることから筋・筋膜性疼痛を生じていると考えられた.筋・筋膜性疼痛に対する治療として,LewitらはPIRの有効性について述べている.今回,PIR等を実施したことで症例1・2の症状改善に至ったと考えられる.
結論:現在,歯科・口腔外科からの直接的な依頼で理学療法士が介入し治療するという一連の流れは日本では普及していない.今日は,全身の骨格筋の評価・治療を実施する理学療法士の介入の必要性と歯科・口腔外科との連携が求められるのではないかと考える.
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© 2015 日本口腔顔面痛学会
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