パーソナルコンピュータ利用技術学会論文誌
Online ISSN : 2433-7455
Print ISSN : 1881-7998
輪郭補完による肝病理組織標本画像の核抽出
佐々木陽祐山見慧高橋正信 中野雅行
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 16 巻 2 号 p. 12-19

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抄録
病理組織診断において鑑別に有用な指標としてNC比がある。NC比を求めるには細胞の面積とともに核の面積を高精度で求める必要がある。深層学習を用いた核の抽出手法では核かどうかを画素ごとに判別する手法(面的抽出手法)が提案されているが,ネットワークの出力を2値化する閾値によって核面積が変動する問題がある。この問題を解決するために核輪郭を閉領域として抽出する手法について検討した。2値化閾値によって輪郭線の太さは変化するが中心位置は変化しないため,核面積を高精度化できる。核輪郭の抽出処理では,抽出できなかった欠損箇所をRecursive additive complement network ( RacNet ) により補完する。RacNetにおいて輪郭が過剰に抽出され面積誤差が大きくなる問題を改善するため,補完する領域を限定する処理を導入した。肝組織の無染色標本の位相差画像を用いて実験を行った。核の抽出精度は面的抽出手法に比べて少し低下するものの,核面積の平均絶対比率誤差は5.5%と,面的抽出手法(9.7%)の半分程度にまで低減できた。面的抽出手法では核面積は2値化閾値により変動したが,輪郭抽出手法では核面積の変動もほとんど無く,核面積の高精度化に対する輪郭抽出手法の有用性が示された。
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© 2021 パーソナルコンピュータ利用技術学会
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