薬剤疫学
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原著
成人気管支喘息治療における吸入指導の課題
恩田 光子櫻井 秀彦早瀬 幸俊坂巻 弘之荒川 行生安川 文朗
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2009 年 14 巻 2 号 p. 69-77

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抄録

 本研究では、成人気管支喘息の薬物治療、とりわけ吸入ステロイド薬の使用指導において、発作の改善にはどの説明項目が特に重要であるのか、また、それらの項目には患者―薬剤師間で説明の程度や理解度に対する「評価の‘ずれ’」に起因した問題は存在するのか、といった点を検証し、より効果的な吸入指導を実践するための課題を明らかにすることを目的とした。
 8つの都道府県に所在する保険薬局に勤務する薬剤師および、当該薬局を利用している成人喘息患者を対象に、吸入指導の内容、理解度、喘息症状の改善度に関する調査を実施し、各説明項目について、薬剤師から受けた説明の程度に対する患者の評価と、薬剤師の自らが行った説明の程度に対する自己評価、および、説明の理解度に対する患者の評価と薬剤師からみた患者の理解度評価の間でスコアが一致しなかった割合を検討した。また、患者の評価と、喘息発作の改善度との関連をχ²検定にて検証し、有意差が認められた項目について、患者―薬剤師間の「評価の‘ずれ’」の程度や特徴を検討した。
 χ²検定の結果、喘息発作の改善には、「使用目的」および「発作時の対応」に関する説明の程度、また、「使用目的」、「用法·用量」、「他薬との相互作用」に関する説明の理解度が重要な鍵を握っていることが示唆された。特に、「使用目的」と「発作時の対応」については、患者と薬剤師との間に、説明の程度や理解度に対する「評価の‘ずれ’」が存在していた。したがって、指導時には、特に吸入ステロイド薬の「使用目的」と「発作時の対応」に留意した説明が肝要である。

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© 2009 日本薬剤疫学会
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