薬剤疫学
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企画/ SS-MIX を基盤とする大規模データベースを用いた医薬品等の安全性調査・研究
1.医療情報データベース基盤整備事業における SS-MIX の利用
小川 倫洋
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2013 年 18 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

医薬品等の安全対策については,現在は主として薬事法に基づく副作用報告に基づき実施している.しかし,副作用報告には,(1) 医薬品等の投与人数を把握できない, (2) 副作用の発現頻度を他剤と比較できない,(3) 原疾患による症状も「副作用」と報告されることがある,(4) 副作用の存在把握には医薬関係者の報告が必要,といった限界がある.これらの限界を乗り越えるためには,従来の副作用報告制度に加え,新たな仕組みを検討する必要がある.そこで,平成 23 年度より,厚生労働省および独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) では,医療情報データベース基盤整備事業を開始した.本事業は,国費および製薬企業の安全対策拠出金を原資として,公募により選定した 10 協力医療機関(7 大学病院および 3 医療機関グループ)に,平成 23 年〜25 年度にデータベースシステムを設置し,医療情報を集積するとともに,PMDA に設置した分析システムを用いて,これらの医療機関の電子化された医療情報を医薬品等の安全対策に活用するものである.厚生労働省および PMDA は,これらシステムを用いて薬剤疫学的手法により医薬品等の副作用情報を定量的に解析し,安全対策に活用する予定である.具体的には,(1) 他剤との副作用発現頻度の比較,(2) 原疾患による症状発現との比較,(3) 安全対策措置実施後の効果の検証等が想定される活用用途である.将来的には,本事業で構築するシステムで1,000 万人のデータを解析できることを目指している.現在は,東京大学に構築した医療情報データベースシステムおよび PMDA に設置した分析システムの準備が整いつつある.今後は,「医療情報データベース基盤整備事業推進検討会」での利活用ルールの検討を行い,データベースの試行的利活用を行うとともに,分析手法の確立等を進めていく予定である.(薬剤疫学 2013;18(1):15-21)

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© 2013 日本薬剤疫学会
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