薬剤疫学
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18 巻, 1 号
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原著
  • Mitsuko MOURI, Takashi FUKUDA, Naruto TAIRA, Yasuo OHASHI, Hiroshi K ...
    2013 年 18 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    Background: Combination treatment with bevacizumab and paclitaxel has been approved for treating human epidermal growth factor receptor 2(HER2)-negative metastatic breast cancer(MBC) in Japan. Japan has no official economical guideline showing decision criteria for the approvals of new drugs. However, the National Institute for Health and Clinical Excellence(NICE) in UK hardly recommends the combinational use of bevacizumab for HER2-negative MBC, because of its poor cost-effectiveness. Objective: The evaluation of the cost-effectiveness of additional bevacizumab as primary chemotherapy for HER2-negative MBC in accordance with the clinical practice guideline in Japan Methods: A Markov cohort simulation was used to follow the clinical course of typical patients with MBC. Transition probabilities were estimated from randomized clinical trials. Direct medical costs were assessed from the perspective of the Japanese health-care system. This study used quality-adjusted life year(QALY), and both costs and QALYs were discounted 3% annually. The time horizon was 10 years. Both a univariate and probabilistic sensitivity analyses were conducted. Results: The additional use of bevacizumab to paclitaxel required an additional cost of JPY 9.12 million(USD 114,000) for obtaining a gain of 0.26 QALYs, and the incremental cost effectiveness ratio was JPY 35 million(USD 437,000). Conclusion:By assuming of GBP 20,000-30,000(JPY 2.5-3.75 million and USD 31,000-46,900) to be an index value threshold by NICE, combination treatment with bevacizumab was found to be hardly cost-effective. Based on the fair and adequate distribution of medical resource, economical guidelines reflecting the Japanese health-care system are necessary. (Jpn J Pharmacoepidemiol 2013;18(1):1-12)
企画/ SS-MIX を基盤とする大規模データベースを用いた医薬品等の安全性調査・研究
  • 小出 大介
    2013 年 18 巻 1 号 p. 13
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
  • 小川 倫洋
    2013 年 18 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    医薬品等の安全対策については,現在は主として薬事法に基づく副作用報告に基づき実施している.しかし,副作用報告には,(1) 医薬品等の投与人数を把握できない, (2) 副作用の発現頻度を他剤と比較できない,(3) 原疾患による症状も「副作用」と報告されることがある,(4) 副作用の存在把握には医薬関係者の報告が必要,といった限界がある.これらの限界を乗り越えるためには,従来の副作用報告制度に加え,新たな仕組みを検討する必要がある.そこで,平成 23 年度より,厚生労働省および独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) では,医療情報データベース基盤整備事業を開始した.本事業は,国費および製薬企業の安全対策拠出金を原資として,公募により選定した 10 協力医療機関(7 大学病院および 3 医療機関グループ)に,平成 23 年〜25 年度にデータベースシステムを設置し,医療情報を集積するとともに,PMDA に設置した分析システムを用いて,これらの医療機関の電子化された医療情報を医薬品等の安全対策に活用するものである.厚生労働省および PMDA は,これらシステムを用いて薬剤疫学的手法により医薬品等の副作用情報を定量的に解析し,安全対策に活用する予定である.具体的には,(1) 他剤との副作用発現頻度の比較,(2) 原疾患による症状発現との比較,(3) 安全対策措置実施後の効果の検証等が想定される活用用途である.将来的には,本事業で構築するシステムで1,000 万人のデータを解析できることを目指している.現在は,東京大学に構築した医療情報データベースシステムおよび PMDA に設置した分析システムの準備が整いつつある.今後は,「医療情報データベース基盤整備事業推進検討会」での利活用ルールの検討を行い,データベースの試行的利活用を行うとともに,分析手法の確立等を進めていく予定である.(薬剤疫学 2013;18(1):15-21)
  • 多田 詠子 , 山田 香織, 遠藤 あゆみ, 松井 和浩, 池田 三恵
    2013 年 18 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,副作用自発報告を補足するデータソースとして電子診療情報の活用方法を検討することで医薬品安全対策を向上させるため,平成 21 年度より MIHARI Project を開始した.このプロジェクトは PMDA の第二期中期計画に基づき設置されている.本稿では,MIHARI Project の中で実施してきた各種試行調査のうち,SS-MIX データと呼ばれる標準化された病院情報システムのデータに関する最新の 2 つの試行調査(試行調査(4)および(5))を紹介する.SS-MIX は厚生労働省が公表した電子的診療情報交換規格であり,本試行調査では協力 6 医療機関の匿名化された SS-MIX データを用いた.試行調査(4)では,医療従事者の注意喚起を目的に製薬企業にシタグリプチンリン酸塩水和物(以下,シタグリプチン)の添付文書の改訂を指示した安全対策措置の影響評価について手法を検討した.その改訂は,重篤な低血糖を回避するために,シタグリプチンとスルホニルウレア剤(以下,SU)の併用時に SUの1日量を減量するよう促す内容であった.安全対策措置の影響を評価する指標として,両医薬品を同月に併用した割合と SU の平均 1 日量の月別推移の措置前後の変化の他,SU 群をリファレンスとした併用群の低血糖アウトカムの措置前後のリスク指標値を用いた.以上のいずれの観点からも SS-MIX データを用いた措置の影響評価は手法としては可能であったが,サンプルサイズが限られ精度の高い解析は困難であった.試行調査(5)では,SS-MIX データから甲状腺機能亢進症アウトカムを特定する際の定義の正確性を検討した.ケース特定時の条件は,1)確定病名あり,2)治療薬処方あり,3)確定病名が付与された月以降に治療薬処方あり,の 3 つとした.関連する診療ガイドラインに基づき判定基準を定め,甲状腺機能検査の結果から真のケースを判定し,陽性的中率を算出した.その結果,治療薬処方の条件を用いることで定義の妥当性が高まることが示唆された.MIHARI Project における試行調査より得られた知見は,医療情報データベース基盤整備事業におけるシステム開発で活用されている他,我々がこの医療情報データベースを利用する際にも有用であると考えている.(薬剤疫学 2013;18(1):23-29)
  • 植田 真一郎, 景山 茂
    2013 年 18 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    製造販売後に現実の診療においてその薬剤を使用した治療法の比較効果や安全性を評価する,外的妥当性をより重視した適切な観察研究が必要とされている.このような目的の場合,恣意性のない連続登録による患者レジストリを構成し,アウトカムを精確に評価し薬剤の推移や経過中の検査値についてやはり恣意性のないデータ抽出が必要となる.治験においてもこのような患者レジストリは有用である.今後方法論的な妥当性を検証することが必要とされるが SS-MIX によるデータストレージシステムはこれらの目的に適った手法であると考えられる.(薬剤疫学 2013;18(1):31-34)
  • 大津 洋
    2013 年 18 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    SS-MIX 標準化ストレージを媒体として,医療情報を研究データベースに直接活用できることを目指した提言を行ったことは,今後の臨床試験への応用に向かって大きな前進であるといえる.その前進をさらに進めるためには,特定の疫学利用が目指されている中で,臨床試験での活用に向けての準備が始められるべきである.臨床試験の場合は,システム的な要件をはじめ,規格の理解,および国際化対応を目指しておくことが望ましく,申請を目的とした場合は,規制当局との事前調整も重要な事項であるといえる.これらのことを解決するためには,いくつかの Proof-of-Concept 試験を経験し,スムースな利用に向けて産官学が作業を行うことが必要であろう.(薬剤疫学 2013;18(1):35-39)
  • 久保田 潔
    2013 年 18 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    日本において,正統的な薬剤疫学研究を実施するための資源はこれまで乏しかった.薬剤疫学研究のための基盤整備につながる重要な一要素として,製薬企業によって実施される市販後の調査をより科学的な薬剤疫学の原理を用いたものとしていくことが挙げられる.2012 年にリスク管理計画(RMP)に関する通知が発出され,ICH の E2E ガイドラインとリスク最小化計画の実装が要求されている.ICH の E2E ガイドラインは薬剤疫学の原理を市販後の調査に用いることを求めたものである.本稿では,SS-MIX 標準化ストレージを用いたレジストリ研究による市販後の調査を,日本において数十年にわたって実施されてきている旧来型の使用成績調査と比較した.使用成績調査は処方の決定が患者を研究に含める決定と区別されていないがゆえに販売促進のための調査として機能する可能性をもっているが,この問題は SS-MIX 標準化ストレージを用いて対象患者を特定することにより避けることが可能である.さらに,標準化ストレージは比較される二つの薬のnew users の特定において強い力を発揮する.データベース研究が将来市販後の調査の一要素となるかもしれないが,主にレコードリンケージの困難さのためにレジストリ研究はデータベース研究を補完するものとして当面,重要であり続けると考えられる.SS-MIX 標準化ストレージを用いるレジストリ研究とデータベース研究両者を促進することが,正統的な薬剤疫学研究の実施に必要な基盤整備につながると考えられる. (薬剤疫学 2013;18(1):41-48)
  • 木村 通男
    2013 年 18 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    SS-MIX とは,平成 18 年度の厚生労働省標準的医療情報交換推進事業のプロジェクト名である.標準化(国際標準である HL7 形式)で,処方,検体検査結果,病名登録,患者基本をはき出すことができる病院情報システムであれば,メーカに関係なく,これらを蓄積するソフトウエアが無償で提供されている.2012 年 3 月末の段階で,全国で 116 の病院が,この SS-MIX 標準化ストレージを装備しており,その多くが,処方,検査結果,病名をそろえて蓄積している.これは,厚生労働省が診療施設の災害対策に関する補助事業を実施した際,有識者会議がこのストレージが有用であると推奨したことも寄与している.各社の病院情報システムから HL7 で標準化された処方,検査結果,患者基本情報が標準ストレージに蓄積される.これを用いて,報告書作成,紹介状作成,災害時のバックアップ,臨床情報検索システムへのデータ提供など,さまざまな利用が可能である.調査票に手書きで記載する場合,該当薬処方,併用薬,検査結果など,実はすでに病院情報システムが持っている情報のことが多い.画面を見ながら間違えなく入力する作業は,医師であろうがスタッフであろうが,無駄であるだけでなく,情報の精度,粒度を下げている.情報の精度向上については,言を待たない.病院情報システムから,該当薬処方,併用薬,検査結果が SS-MIX 標準ストレージに蓄積されている.各病院が厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠していることを前提とすれば,これらの情報を,ヴァリデーションに耐え得る精度で元資料のまま取り込むことを容易に達成できると考えられる.(薬剤疫学 2013;18(1):49-56)
  • 青木 事成, 小宮山 靖, 鍵村 達夫, 庄本 幸司, 平河 威
    2013 年 18 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    SS-MIX 標準ストレージを活用し医療現場の負担減を実現することについて我々製薬企業は賛成する.調査実施期間の短縮,多様な調査研究・安全対策のサポート,より正確な病態・治療情報取得といったメリットもさることながら,情報化社会においてこうした新技術を積極的に活用することは社会的使命でもある.具体的活用法としては,(1)使用成績調査・特定使用成績調査一般での利用,(2)適切なサンプリング調査,(3)患者モニタリング,(4)疾患レジストリ等,対照群をおいた観察研究,(5)安全対策の結果レビュー等が考えられる.また,情報保護に関する議論を含む規制の解釈・コンセンサスの問題や,社会インフラ上の課題があり,この技術を実際に活用するためには,引き続き産官学が積極的・協力的に議論を進めていかなければならない. (薬剤疫学 2013;18(1):57-64)
  • 久保田 潔, 小出 大介, 古閑 晃, 景山 茂, 植田 真一郎, 木村 通男, 豊田 建, 大橋 靖雄, 大津 洋, 青木 事成, 小 ...
    2013 年 18 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2013/08/31
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    Standardized Structured Medical record Information eXchange(SS-MIX)は 2006 年に厚生労働省標準的医療情報交換推進事業として開始されたプロジェクトである.病院情報システムから HL7 形式で出力される処方,臨床検査の結果,診断,患者情報のデータを受信・蓄積するためのソフトウエアは無償で提供されている.我々は SS-MIX 標準ストレージの市販後調査や臨床研究への利用を推奨する.提言は以下の 7 つから構成される. [1]調査や臨床研究において,SS-MIX 標準ストレージの薬や臨床検査の結果に関する情報は電子的調査票に直接取り込むことができ,研究者は高い精度と粒度の情報を得ることができる. [2]SS-MIX 標準ストレージは地震や突然のネットワーク障害などの災害時において診療に必須の最低限の情報を提供することができ,医療情報の喪失を最小限にとどめるためのツールとして機能しうる.[3]SS-MIX 標準ストレージは,ストレージ内の情報の効率的取得とともに,ある薬を特定期間非使用後に開始した “new users” の特定を可能とし,良質の薬剤疫学研究を実施するために利用することができる.“new users” デザインはバイアスのない結果を得るためにはしばしば必須である. [4]製薬企業が規制にしたがって市販後の調査を実施する際に,SS-MIX 標準ストレージはデータの迅速で効率的な収集を促し,時宜にかなったリスク最小化のための方策を講ずることを可能とする.また,SS-MIX 標準ストレージによって,複数のタイプの研究デザインの利用やデータの質の向上が期待される. [5]SS-MIX 標準ストレージは,リスク最小化計画実施前後の処方パターンや問題となる有害事象の発生を比較することによるリスク最小化計画の評価にも利用可能である. [6]臨床試験の計画にあたって,SS-MIX 標準ストレージは適格患者数の推定に用いることができる.疾患や薬物治療の特徴を知るための断面研究に用いることもできる.さらに,冠動脈造影を実施した患者,薬の新規使用者や稀少疾患患者のコホート特定が可能である.そのようなコホートを用いて,コホート内の症例対照研究,ファーマコゲノミックス研究,治療法の有効性/有用性を比較する研究が可能になる. [7]SS-MIX 標準ストレージは,将来いくつかの条件が満たされれば臨床研究における正規のデータソースとして利用することができる.たとえば,標準化したデータ構造規格(例:Clinical Data Interchange Standards Consortium(CDISC))の利活用,およびコンピュータ化システムバリデーション(Computerized System Validation,CSV)に関する取扱いについて,産官学での合意形成ができること,である.
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