薬剤疫学
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企画/PMDA の自発報告データベースの新たな活用と今後の課題
4. 重篤な薬疹を引き起こす薬剤相互作用の探索
須々田 寛高橋 行雄
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キーワード: 薬剤併用, PRR, ROR, SJS, TEN
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2014 年 19 巻 1 号 p. 39-49

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抄録

2012年4月に,独立行政法人医薬品医療機器総合機構から開示された医薬品副作用報告データセット(英名:Japanese Adverse Drug Event Report database,略称:JADER)の新たな活用事例について報告する.本報告の目的は,副作用発現において薬剤相互作用の影響の可能性を薬剤の併用リスクと仮定し,複数の薬剤が同時に報告された頻度による併用リスクの評価方法を検討することである.薬剤併用時の安全性リスクの潜在的な程度を見積もるため,以下の手順で評価した.1)対象とする 2つの被疑薬を 1つの薬剤とみなすため,1つの報告の中にそれらの被疑薬が共に記載された場合を薬剤の使用ありとする統計的シグナル指標,併用の指標を算出する.2)対象の 2つの被疑薬についての統計的シグナル指標を個別に算出する.3)個別に得られた指標に対する併用の指標の比が 2つの被疑薬のいずれにおいても 2 を超える場合を併用リスクがあると判定する.ここで,統計的シグナル指標は比例報告比(Proportional Reporting Ratio:PRR)および報告オッズ比(Reporting Odds Ratio:ROR)を用いた.本法の妥当性を確認するため,JADER において報告された重篤な薬疹の副作用で知られる Stevens-Jonson Syndrome(SJS)および Toxic Epidermal Necrolysis(TEN)に注目し,医薬品の関与が被疑薬としてそれらが報告された薬剤に限定した.併用リスクの条件を満たす被疑薬の組合せは SJS の場合に 159通りの中から 10通り,TEN の場合に 111通りの中から 22通りの候補がそれぞれ検出された.今回の結果から,本アプローチは有効な手段と考えられたが,併用の指標の比,選択する薬剤の報告件数の基準,3剤以上の場合の効果的な算出方法など今後さらなる検討が必要である.

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© 2014 日本薬剤疫学会
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