薬剤疫学
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19 巻, 1 号
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原著
  • Eiko SHIMIZU, Kazuo KAWAHARA
    2014 年 19 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    Objective: Medical information databases provide useful Real World Evidence (RWE) and a comprehensive view of medical activities. However, since each database has limited coverage and cannot be self-sufficient, combining information from multiple databases is a useful research technique. In this study, we examined methods of estimating patient numbers by combining information from multiple databases in order to assess the respective databases and identify the respective characteristics, biases and idiosyncrasies. This process also allowed us to propose improvements in the grand design of medical information databases in Japan.
    Design: Retrospective observational cohort study
    Methods: We attempted to estimate the numbers of patients treated for certain diseases and the numbers prescribed a drug by three methods: i) We estimated patient numbers for seven diseases using an insurance claims database, adjusting the proportion of elderly patients according to a hospital medical records database; ii) Sales information for drug X was combined with the prescribed volume per person estimated from pharmacy claims databases to estimate the number of patients administered X; this number was divided by the prescription rate obtained from a medical claims database to calculate patient numbers for the associated disease; and iii) We examined two surveys of the National Institute of Infectious Diseases (NIID) for timely estimation of patient numbers for influenza, referring to estimates from an insurance claims database.
    Results: In Method i)-iii), we proved that it is possible to estimate patient numbers for many diseases and administered drugs by effectively combining multiple medical information databases. Validation could be claimed when multiple methods lead to similar results.
    Conclusion: These databases provided by government agencies and private corporations are separately managed, and there is no grand plan to integrate them into one platform. It is crucial that databases, rather than being designed to stand alone, are standardized according to widely used systems under a solid master data management strategy. This will make it easier to combine information from multiple databases and to maximize their values. Mutual use of these databases by academic researchers for epidemiological and clinical studies and by government policy makers and data scientists of pharmaceutical companies may improve the usefulness of these databases and expand their application in research.
企画/PMDA の自発報告データベースの新たな活用と今後の課題
  • 高橋 行雄
    2014 年 19 巻 1 号 p. 13
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
  • 高橋 行雄
    2014 年 19 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    副作用自発報告は,実際に臨床現場において副作用と認識された事象の一部しか報告されないこと,またその割合がさまざまな要因で変動するといった報告バイアスが存在すること,発生頻度が求められず一般的な副作用発現の評価手法が適応できないという問題が知られている.そのため,シグナル検出という探索的な解析法が確立されてきた.(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医薬品副作用データベース(JADER)が, 2012年4月に公開され,誰でも制約なしに使えるようになった.本データベースの活用により,薬剤疫学研究の質が向上することが期待されている.しかしながら,活用方法としては「シグナル検出」に注目されがちであり,その結果,規制当局が対応すべき課題と認識され,製薬企業などでの活用事例の報告は少ないのが現状である.筆者ら第2期医薬安全性研究会薬剤疫学グループは,JADER 公開以前から網羅的ではないが,PMDA が提供している「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索」で得られたリストを取りまとめてデータベース化し,薬剤疫学の検討方法を参考に製薬企業の中での活用を試みてきた.その後,JADER を用いて一般的な PC でも可能なシグナル検出のための統計量を容易に算出するための方法を考案し,各種の課題に応用を試みてきた.本論文では,シグナル検出を可能にするための JADER の処理方法について解説する.この方法を用いて,多くの薬剤疫学の課題に対する応用が活発に行われ,薬剤疫学研究の質の向上に寄与することを期待する.
  • 山田 雅之, 半田 淳
    2014 年 19 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    医薬品副作用データベース(英名: Japanese Adverse Drug Event Report database,略称; JADER)が,2012年4月に公開され,医薬品の適正使用情報としての活用が期待されている.本論文では,副作用発現時期の新たな評価方法として,副作用発現日を Weibull 分布にあてはめて推定した形状パラメータによる発現時期プロファイルの分析を取り上げ,自殺関連または糖尿病関連副作用のインターフェロン製剤間の違いを検討した.2013年8月の JADER から重複を除いた薬剤と副作用の組合せ件数 702,925 件のデータを用いた.自殺関連または糖尿病関連副作用は,PRR 等でシグナルと判断された.糖尿病関連副作用は,製剤間で副作用発現時期の分布が異なり,Weibull 分布の形状パラメータは,α 製剤では1.49(1.09-1.94)(点推定値および両側 95%信頼区間)と下側 95%信頼区間が有意に 1 を超え,摩耗故障型副作用時期プロファイルが示唆された.β 製剤では 0.84(0.66-1.05)と上側 95%信頼区間が 1 をわずかに上回るため初期故障型に近く,ペグ製剤 は,1.07(0.92-1.23)と点推定値はほぼ 1 であることから偶発故障型と考えられた.自殺関連副作用では,副作用発現時期の分布は製剤間で類似しており,形状パラメータはいずれの製剤も,点推定値は 0.89~1.01,95%信頼区間が 1 を含むことから副作用発現時期プロファイルは偶発故障型と判断された.この情報に,ヒストグラムや箱ひげ図などのグラフ表示による視覚的評価を併用することで,より具体的な安全性監視対策を検討することが可能となり,本評価方法は有用であると考えられた.
  • 澤田 克彦, 広岡 禎
    2014 年 19 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    医薬品副作用データベース(英名:Japanese Adverse Drug Event Report database,略称;JADER)が 2012年4月から一定の利用規約条件のもと,誰もがダウンロードし,利用できるようになった.今回我々は医薬品副作用被害救済制度の対象となる症例が増加している重症薬疹に着目し,代表的な重症薬疹の特徴と重症薬疹ごとの被疑医薬品の傾向,共通点について JADER を利用して分析を試みた.手法としては頻度集計に加え,副作用と医薬品の報告不均衡に基づく ROR(Reporting Odds Ratio)の推定,ならびに副作用発現時間の Weibull 分布あてはめによる分布パラメータ推定を適用した.JADER には重複報告を除き 10,171 件の解析対象とする重症薬疹の報告が含まれ,臨床経過や被疑医薬品のプロファイルに特徴を有する Drug Induced Hypersensitivity Syndrome(DIHS:薬剤性過敏症症候群)は JADER のデータにおいても抗てんかん薬など特徴的な被疑医薬品の報告件数が多いことが確認できた.一方,ROR での評価では典型的な被疑薬として認知されていない薬剤も高いシグナル数値を示した.Weibull 分布の形状パラメータ推定値による副作用発現時期の解析については,DIHS は他の重症薬疹に比べて明確な差が認められ,発現時期のピークも他の重症薬疹より遅い20日前後であった.今回我々が検討したように自発報告副作用についてさまざまな側面からデータを分析し,その情報を捉えることは医薬品の安全性対策に関わる者にとって有用な取組みと考えられる.
  • 須々田 寛, 高橋 行雄
    2014 年 19 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    2012年4月に,独立行政法人医薬品医療機器総合機構から開示された医薬品副作用報告データセット(英名:Japanese Adverse Drug Event Report database,略称:JADER)の新たな活用事例について報告する.本報告の目的は,副作用発現において薬剤相互作用の影響の可能性を薬剤の併用リスクと仮定し,複数の薬剤が同時に報告された頻度による併用リスクの評価方法を検討することである.薬剤併用時の安全性リスクの潜在的な程度を見積もるため,以下の手順で評価した.1)対象とする 2つの被疑薬を 1つの薬剤とみなすため,1つの報告の中にそれらの被疑薬が共に記載された場合を薬剤の使用ありとする統計的シグナル指標,併用の指標を算出する.2)対象の 2つの被疑薬についての統計的シグナル指標を個別に算出する.3)個別に得られた指標に対する併用の指標の比が 2つの被疑薬のいずれにおいても 2 を超える場合を併用リスクがあると判定する.ここで,統計的シグナル指標は比例報告比(Proportional Reporting Ratio:PRR)および報告オッズ比(Reporting Odds Ratio:ROR)を用いた.本法の妥当性を確認するため,JADER において報告された重篤な薬疹の副作用で知られる Stevens-Jonson Syndrome(SJS)および Toxic Epidermal Necrolysis(TEN)に注目し,医薬品の関与が被疑薬としてそれらが報告された薬剤に限定した.併用リスクの条件を満たす被疑薬の組合せは SJS の場合に 159通りの中から 10通り,TEN の場合に 111通りの中から 22通りの候補がそれぞれ検出された.今回の結果から,本アプローチは有効な手段と考えられたが,併用の指標の比,選択する薬剤の報告件数の基準,3剤以上の場合の効果的な算出方法など今後さらなる検討が必要である.
  • 前田 玲
    2014 年 19 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    本邦の医薬品安全性監視において,企業から報告する個別症例報告は添付文書改訂等の安全対策の根拠として重要な位置を占める.一方,収集情報の集積分析は,利用可能なデータが限られていることもあり欧米に比べ盛んではない.個別症例報告を集積したデータベースである医薬品副作用データベース(英名:Japanese Adverse Drug Event Report database,略称;JADER)を集積分析に利用する試みが本企画にて行われている.本データベースが,安全性情報の一部である「重篤な副作用」と評価された自発報告症例を主として集積したものであることから,シグナル管理や安全対策の目的で利用するには限界があるが,当局主導で現在構築中の医療情報データベースやナショナルクレームデータベースが利活用可能となる数年後を想定して仮想的に利用することは価値があると考える.
活動報告
  • よりよい医薬品安全性監視計画作成とチェックリスト
    久保田 潔, 青木 事成, 漆原 尚巳, 鍵村 達夫, 景山 茂, 小出 大介, 古閑 晃, 佐藤 嗣道, 中村 敏明, 中島 研, ...
    2014 年 19 巻 1 号 p. 57-74
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    日本薬剤疫学会では,医薬品リスク管理(Risk Management Plan:RMP)を作成,実行する側の製薬企業と医療現場およびアカデミアからなるタスクフォースを設置し,2012年4月に厚生労働省より発出された医薬品リスク管理計画指針通知に明記されているICH E2E に準拠した安全性監視計画(Pharmacovigilance Plan:PVP)が立案可能となるようなガイダンスを作成した.内容は以下の 6つから構成されている.
    1.はじめに:市販後安全性監視に係るこれまでの当学会活動や,活動の目的
    2.安全性検討事項(Safety Specification:SS)の選択と特徴を記述するためのプロセス
    ・SS をどう選択するか
    ・SS をどう特徴付けるべきか
    ・リサーチ・クエスチョン(Research Questions:RQ)にどうつなげるか
    3.RQ の決定と記述
    ・RQ とは何か
    ・各種ガイドラインではどう扱われているか
    ・PVP へ RQ を記述する方法と具体的事例
    ・PVP 全体としてみた最適とは
    4.RQ に最適化された PVP
    ・通常の PVP で可能か,追加の PVP が必要か
    ・追加の PVP のデザインの選択について(RQ と研究デザイン,PICO を用いた RQ の記述,評価の指標)
    ・PVP の記載事項チェックリスト作成について
    5.結語:使用成績調査の位置づけ,背景発現率と比較群の必要性,今後の PVP の課題
    6.別添:PVP の記載事項チェックリスト
    以上をもって医薬品リスク管理計画指針に明記されている「ICH E2E ガイドラインに示されている安全性検討事項及びそれを踏まえた医薬品安全性監視計画」が作成,実行できることを期待したい.
日本薬剤疫学会 第19回学術総会記録
会長講演
  • 浜田 知久馬
    2014 年 19 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/13
    ジャーナル フリー
    1996年3月に会誌「薬剤疫学」Vol.1 No.1 が発行され,以後毎年2号を目標に定期的に発行されてきた.最新号は2013 Vol.18 No.1 となる.原著論文はそれほど多くはないが現在までに43報が掲載されている.この原著論文43報に基づいて,これまで我が国において,どのような薬剤疫学研究が行われ,研究のデザインがどのように変化したかを分析した結果について報告する.データベース・方法論に関する研究,医療経済評価はほぼ一定の割合で存在した.有用性評価,薬剤使用実態調査は当初は多かったが,現在では減少している.安全性評価は当初はあまり行われなかったが,最近は増加している.また研究デザインではコホート研究,文献調査,アンケート調査はほぼ一定の割合で存在するが,最近では,ハイブリッドなデザインであるケースクロスオーバー研究,ネステッドケース・コントロール研究等によって安全性評価を行った研究もみられる.
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