2017 年 21 巻 2 号 p. 51-62
目的:本邦における現行の医薬品安全性監視を補完するため,網羅的に定量的なシグナル検出を行う手法として,電子カルテデータベースに LASSO (Least Absolute Shrinkage and Selection Operator) ロジスティック回帰を適用することを目的とした.
デザイン:case-control study
方法:単一医療機関の電子カルテデータベースを用いて,40,767 名の入院患者を対象に,入院期間中に臨床検査値の異常が観察された患者を,有害事象が疑われるケースとして同定した.有害事象として,膵炎疑いおよび血小板減少を対象とした.LASSO ロジスティック回帰により性別,年齢,併存症および診療行為による交絡を調整し,医薬品副作用シグナルを検出した.医薬品添付文書から副作用が既知である医薬品の正解セットを作成し,シグナルありと判定された医薬品と比べ,陽性的中度を算出した.
結果:ケース群は膵炎疑い,血小板減少それぞれ 6,735 名,11,561 名であった.LASSO ロジスティック回帰でシグナルありと判定された医薬品の数は膵炎疑い,血小板減少それぞれ 27 個,40 個であり,陽性的中度はそれぞれ3.7%,55.0%であった.
結論:LASSO ロジスティック回帰は併存症および診療行為による交絡の調整を効率的に行うことができると考えられる.本研究で得られた偽陽性シグナルには未知副作用のシグナルが含まれている可能性も否定できず,明確にするには今後の精査が必要である.