抄録
食肉の結合組織を構成するコラーゲンの量とその構造は食肉のテクスチャーを決定する最も大きな要因である。しかし,実際の調理過程におけるコラーゲンの構造変化とテクスチャーの関係についての報告は少なく,食肉の加熱過程におけるコラーゲンの構造変化とテクスチャーの関係は明らかではない。本研究では,鶏手羽元を試料とし,ホテルパンあるいは真空パックを用いたクックチルシステムにおいて,一次加熱および二次加熱過程でのコラーゲンの量と構造変化を把握し,テクスチャー等に及ぼす影響を評価した。
その結果, 真空パックを用いて加熱した鶏手羽元の肉部分は,ホテルパンを用いて加熱した場合と比較して,二次加熱後の試料でも総コラーゲン量,ISC量が多く,脂肪量,水分量も多かった。官能評価の結果においても,真空パックを用いた鶏手羽元は多汁性,弾力性があるとされ,一次加熱よりも二次加熱を行った試料で総合評価が高かった。 これは,真空パックでの加熱は調味液が少ないために,収縮したコラーゲンの構造弛緩が抑制され,コラーゲン量が高く維持されたためと推察された。