薬剤疫学
Online ISSN : 1882-790X
Print ISSN : 1342-0445
ISSN-L : 1342-0445
企画/リアルワールドデータ活用による承認審査・安全性監視の進展・チャレンジ
1.リアルワールドデータの医薬品等の承認審査,製造販売後安全性監視に関する薬事制度下での利活用の進展
小居 秀紀中村 治雅
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 24 巻 1 号 p. 2-10

詳細
抄録

リアルワールドデータを取り巻く薬事規制の環境は,医薬品等開発,製造販売後のいずれのフェーズにおいても,今まさに,大きな変革を迎えている.
まず,医薬品開発に関しては,ICH における E8 ガイドライン (臨床試験の一般指針) の近代化と引き続き行われる E6 ガイドライン (ICH-GCP) の改訂である「GCP Renovation」がある.ここでは実際的臨床試験 (Pragmatic Clinical Trial) や患者レジストリデータを用いたランダム化比較試験,さらにリアルワールドデータを全部または一部用いる非介入の観察研究までも対象範囲となっている.この動きは,米国における「21st Century Act (21 世紀治療法)」において,臨床試験の合理化等による薬事承認迅速化の課題として取り上げられ,適応拡大の承認審査の際にリアルワールドデータが用いられる事例も出ている.また,日本においても,クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想のもと,患者レジストリ等の自然歴研究データを治験対照群として承認審査資料に用いることの検討が進んでいる.
次に,製造販売後に関しては,「医薬品の条件付き早期承認制度について (平成 29 年 10 月 20 日,薬生薬審発 1020 第 1 号)」において,条件解除の要件として,医療情報データベース (MID-NET) 事業やクリニカル・イノベーション・ネットワーク構想における患者レジストリのようなリアルワールドデータを用いた製造販売後の有効性・安全性の確認が記述された.また,「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令 (いわゆるGPSP 省令) (平成 29 年 10 月 26 日,厚生労働省令第 116 号)」において,MID-NET 等の医療情報データベースを用いて実施する調査である「製造販売後データベース調査」が新たに規定され,製造販売後の安全性監視活動におけるリアルワールドデータの利活用が開始されたところである.

著者関連情報
© 2019 日本薬剤疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top