2018 年 4 月に施行された「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(GPSP 省令)」の改正により,製造販売後の安全性監視活動においてリアルワールドデータの活用が認められた.そこで本稿では,「最良のエビデンスをつくる(サイエンス)」「公衆衛生を保証する(レギュレーション)」「患者に対して良いことをする (フィードバック)」という安全性監視の 3 つの特徴が今回の改正においてどのように反映されているのか,企業の立場から考察した.
総じて,リアルワールドデータ活用を規定した今回の GPSP 省令改正は,安全性監視が持つ上記 3 つの特徴を活かし,その進展を促すものであった.一方で,リアルワールドデータを活用した安全性監視活動の発展を更に促しうる点もいくつか明らかとなった.リサーチクエスチョンにおいては,追加の安全性監視活動が必要となるリサーチクエスチョンの考え方や通常の安全性監視活動等で得られる製造販売後情報をリサーチクエスチョン選択に活用していく可能性について触れた.また,データ(データソース)に関連して,比較調査実施前に行うべき調査の内容・時期等の例を紹介するとともに,それを可能とする基礎的検討の拡充などに言及した.最後に,方法論においては記述的研究や疾患レジストリ等,方法論・データソースのバリエーションの更なる拡大等が海外との比較より課題として考えられた.また,これらの進展は,国際的な標準化そして国際競争力の発揮にも繋がるものと考えられた.
数多くの選択肢の中から最適解となるリサーチクエスチョン・データソース・方法論を選択することは非常に難しいことであるが,これらの継続的な検討こそが,最適な安全性監視活動を可能とする経験の蓄積となり,結果,医薬品を使用する患者を守ることに繋がるものと信じ,各ステークホルダーが一体となり更なる検討が進められることに期待したい.
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