薬剤疫学
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24 巻, 1 号
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企画/リアルワールドデータ活用による承認審査・安全性監視の進展・チャレンジ
  • 宮崎 真
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー
  • 小居 秀紀, 中村 治雅
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    リアルワールドデータを取り巻く薬事規制の環境は,医薬品等開発,製造販売後のいずれのフェーズにおいても,今まさに,大きな変革を迎えている.
    まず,医薬品開発に関しては,ICH における E8 ガイドライン (臨床試験の一般指針) の近代化と引き続き行われる E6 ガイドライン (ICH-GCP) の改訂である「GCP Renovation」がある.ここでは実際的臨床試験 (Pragmatic Clinical Trial) や患者レジストリデータを用いたランダム化比較試験,さらにリアルワールドデータを全部または一部用いる非介入の観察研究までも対象範囲となっている.この動きは,米国における「21st Century Act (21 世紀治療法)」において,臨床試験の合理化等による薬事承認迅速化の課題として取り上げられ,適応拡大の承認審査の際にリアルワールドデータが用いられる事例も出ている.また,日本においても,クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想のもと,患者レジストリ等の自然歴研究データを治験対照群として承認審査資料に用いることの検討が進んでいる.
    次に,製造販売後に関しては,「医薬品の条件付き早期承認制度について (平成 29 年 10 月 20 日,薬生薬審発 1020 第 1 号)」において,条件解除の要件として,医療情報データベース (MID-NET) 事業やクリニカル・イノベーション・ネットワーク構想における患者レジストリのようなリアルワールドデータを用いた製造販売後の有効性・安全性の確認が記述された.また,「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令 (いわゆるGPSP 省令) (平成 29 年 10 月 26 日,厚生労働省令第 116 号)」において,MID-NET 等の医療情報データベースを用いて実施する調査である「製造販売後データベース調査」が新たに規定され,製造販売後の安全性監視活動におけるリアルワールドデータの利活用が開始されたところである.

  • 石黒 智恵子, 宇山 佳明
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    昨今,日本の薬事行政において,安全性監視におけるリアルワールドデータ活用を念頭においたさまざまな規制改革が進められつつある.その最も大きなもののひとつが,「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令 (平成 16 年厚生労働省令第 171 号)」(Good Post Marketing Study Practice;GPSP) の改正によって,製薬企業が実施する製造販売後調査のひとつに「製造販売後データベース調査」が位置づけられたことであろう.しかしながら,医薬品安全性監視としてデータベースを活用するということは,今まで日本の安全性監視の主流であったシングルコホート数千例の使用成績調査をそのままデータベースに置き換えるというような単純なことではない.リアルワールドデータ活用をきっかけに,取り組むべき課題により最良の手法が選択されるよう安全性監視における種々の課題の進展が期待される.

  • 東郷 香苗, 川松 真也, 木口 亮, 今井 康彦
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    医薬品開発におけるエビデンス創出はこれまで臨床試験に偏っていたが,そのアプローチにはもっと選択肢があるべきであり,リアルワールドデータ (RWD) がその役割を果たすことが期待される.ICH GCP リノベーションでも,多様な試験デザインとデータソースの選択肢を持つこと,患者に画期的な新薬を早く提供するために早期承認申請をサポートすることが挙げられている.本邦においても,条件付き早期承認制度や改正GPSP 省令で医療情報データベースや患者レジストリ等の活用が可能であることが明記された.本稿では,医薬品開発における RWD の活用として,① 承認申請データへの活用, ②臨床試験計画および患者リクルートメントへの活用,③ Electronic Health Record をデータソースとした臨床試験データの収集,④ 臨床試験の評価や診断への活用,⑤ 開発戦略,薬価・アクセス戦略への活用についてまとめる.それぞれの活用場面で課題があり,インフラと規制環境の整備が望まれるものの,それを待つことなく医薬品開発の現場でRWD の活用が進むことに期待したい.

  • 宮崎 真, 志藤 章仁, 古田 英司, 下寺 稔
    2019 年 24 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/17
    ジャーナル フリー

    2018 年 4 月に施行された「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(GPSP 省令)」の改正により,製造販売後の安全性監視活動においてリアルワールドデータの活用が認められた.そこで本稿では,「最良のエビデンスをつくる(サイエンス)」「公衆衛生を保証する(レギュレーション)」「患者に対して良いことをする (フィードバック)」という安全性監視の 3 つの特徴が今回の改正においてどのように反映されているのか,企業の立場から考察した.

    総じて,リアルワールドデータ活用を規定した今回の GPSP 省令改正は,安全性監視が持つ上記 3 つの特徴を活かし,その進展を促すものであった.一方で,リアルワールドデータを活用した安全性監視活動の発展を更に促しうる点もいくつか明らかとなった.リサーチクエスチョンにおいては,追加の安全性監視活動が必要となるリサーチクエスチョンの考え方や通常の安全性監視活動等で得られる製造販売後情報をリサーチクエスチョン選択に活用していく可能性について触れた.また,データ(データソース)に関連して,比較調査実施前に行うべき調査の内容・時期等の例を紹介するとともに,それを可能とする基礎的検討の拡充などに言及した.最後に,方法論においては記述的研究や疾患レジストリ等,方法論・データソースのバリエーションの更なる拡大等が海外との比較より課題として考えられた.また,これらの進展は,国際的な標準化そして国際競争力の発揮にも繋がるものと考えられた.
    数多くの選択肢の中から最適解となるリサーチクエスチョン・データソース・方法論を選択することは非常に難しいことであるが,これらの継続的な検討こそが,最適な安全性監視活動を可能とする経験の蓄積となり,結果,医薬品を使用する患者を守ることに繋がるものと信じ,各ステークホルダーが一体となり更なる検討が進められることに期待したい.

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