薬剤疫学
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MID—NET® データに基づく適切な医薬品安全性評価のためのデータ特性把握 ―肺高血圧症治療薬による肝機能検査値異常発現割合やバイオ後続品の処方実態の検討を通じて―
駒嶺 真希長谷川 知章安藤 孝宇山 佳明
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論文ID: 28.e1

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抄録

目的: MID-NET®はこれまでにさまざまな薬剤疫学的な解析を通じて市販後の医薬品安全性評価に貢献している.適切な活用を促進する一助とするため,MID-NET®の特徴把握のための二つの調査を実施した.本稿では,これらの調査結果を述べ,今後の調査における留意点等を考察する.

調査デザイン: 医療情報データベースの二次利用によるコホート調査

方法: 一つ目の調査では,検体検査の結果値の特徴を把握し,肝機能障害のリスク評価法を検討するため,肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害の発現状況を全例調査の結果と比較考察した.また,二つ目の調査では,関連薬剤の処方選択や切替え時の特徴を把握するため,先行バイオ医薬品とバイオ後続品(以下「BS」という)の処方実態について検討した.

結果: 肝機能障害のリスク評価法の検討において,肺動脈性肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害発現状況は,アウトカム定義として設定した重症度のグレードにより異なるものの,重症度を一定程度考慮した基準を用いることで,全例調査における副作用と同程度の発現状況を確認できる可能性が示唆され,各検査項目を組み合わせた定義など,異なる基準での結果と合わせて検討しその頑健性などを確認することで,適切な評価が可能になるものと考えられた.BS の処方実態の検討において,BS の処方は全体的に経時的に増加する傾向が認められたが,その程度は有効成分ごとに異なっていた.また,先行バイオ医薬品からBS またはBS から先行バイオ医薬品へ切替え処方が行われた症例,切替えることなく先行バイオ医薬品またはBS を継続的に処方された症例が一定程度確認され,その処方動向には年齢等により異なる傾向が認められたことから,今後の調査にあたっては,先行バイオ医薬品とBS の処方状況を考慮することが重要であることが示された.

結論: これら二つの調査結果は,MID-NET®データの特性を理解するために有用であり,MID-NET®の利用可能性の検討促進に寄与するものと考えられた.

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