体育学研究
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東京YWCAの体育的諸活動に関する歴史的研究
国枝 タカ子澤本 和子
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1976 年 20 巻 6 号 p. 321-332

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抄録

日本における戦前の女子体育は学校体育中心の活動であった. 家庭あるいは地域社会において女子を中心とする女子のための体育活動は少なかった. まして体制に奉仕する官制の活動ではなく, 独自の立場をもって女子体育活動を展開した例は稀有である. その稀な一例が東京YWCAにおける体育的諸活動である. 東京YWCAは1905年に設立された. 現在まで70年間の歴史は第2次世界大戦終結を境に2期に時代区分できる. 敗戦前をその第1期とし, これをさらに次の4期に分類した. 第1期(1)創立期1905〜1915年 (2)発展期1915〜1923 (3)再建隆盛期1923〜1936 (4)戦時期1937〜l945 今回はこの(1)〜(4)を記述した. この期間に東京YWCAに携ったスタッフは幹部委員122名, 職員32名, 外国人スタッフ44名, 計198名である. 東京YWCAの体育的諸活動にみられる特徴は次の5つに要約することができる. その第1は, この活動が, 女子のためのものであり, 欧米YWCA直輸入の活動によって行なわれたことである. 第2は, 津田梅子以下スタッフの多数がアメリカ, カナダなどでの留学経験をもつ女性インテリゲンチャであり, 外国人スタッフもリーダーシップをもっていたことである. 第3は, その活動を支える思想はキリスト教であり, キリスト教を支柱とした欧米の保健体育思潮をもとに行なわれたことである. 第4は, 学校体育のワクにとらわれずに活動が行なわれ, 斬新で自由な発想やアイデアが実践に移されてきたことである. 第5に, その活動は社会体育の場で行なわれ, 女子のための生涯体育につながる働きをしたことである. なお, 敗戦後の歴史については別の機会に記述したい.

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© 1976 一般社団法人 日本体育学会
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