体育学研究
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水上性移行における一側偏向性の観察
服部 恒明
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1976 年 20 巻 6 号 p. 333-338

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抄録

水上性移行時における一側偏向性の様相を理解するため, 視覚遮断時の移行経過を観察した. 実験, 観察は50×15mのプールにて実施し, 被験者は実験の対象とする泳ぎが50m以上泳げる男子学生, 20名である. 視覚遮断用眼帯を装着した被験者は, プール一端の中央(4)コース上に正対起立し, 合図によりスタートした. スタート方向の誤まりを除くため, 5m以上直進したもののみを観察の対象とし, 被験者の頭部が各コースラインからはずれた瞬間のスタート壁からの距離を求めた. このようにして得られたプール上の座標点を, 250分の1のプール平面図にプロットし, それらの点を滑らかに結ぶ曲線を経過曲線とし, スタート点から到着点までの経過曲線距離, 直線距離, 及びそれらの間の示数(c/s示数)を求めた. 分析により得られた知見は以下のように要約される. 一般に, 左側偏向の出現率は, 右側偏向のそれより大きい傾向がみられた. クロール, 平泳ぎ, バタフライは相対的に直線性が強く, c/s示数値は約105〜107であるが, 犬かき, 横泳ぎ, 背泳は容易に曲りはじめ彎曲度も大きいことが明らかとなった. それらc/sの示数は約108〜112である. 非対称性のロコモーションである横泳ぎでは, 腹側, 背側のいずれにも偏向する可能性があり, また, クロールでも, 呼吸側の同側および反対側のいずれにも偏向することが知れたが, 出現率は反対側でやや多いことが示された.

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© 1976 一般社団法人 日本体育学会
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